当院のがんに対する診療機能について

診療・各部門

地域のがん診療拠点病院として、信頼されるがん医療を目指します

 当院では諫早市内の方は言うに及ばず近隣の雲仙市、島原市、南島原市、大村市、長崎市、また佐賀県の一部からも広くがんの患者さんを受け入れています。ほとんどの臓器のがん種に対応して診療を行っており、手術療法、化学療法、放射線療法を治療の三本柱としながら入院治療、外来治療のいずれにも対応しています。対応できる診療内容について以下の一覧表に示しています。

 特に医療圏が広いために遠方から受診される患者さんでも円滑にがん治療の継続が出来るように、地元・地域にできるだけかかりつけ医を持っていただいて地域の診療所の先生と連携して診療を行うことに積極的に取り組んでいますので、当院から遠方にお住いの方でも心配されずに受診されてください。

 また、緩和治療にも積極的に取り組みながらがん患者さんの地域での生活を支援することを常に考えて包括的なケアを実践しています。お気兼ねなくご相談ください。

■ 診療を行っているがんの種類一覧

当院のがん治療について

1.手術療法

 がんの病巣を切除し、その臓器の周辺組織やリンパ節に転移があれば一緒に切り取ります。早期のがんやある程度進行したがんでも切除可能な状況であれば手術ですべて切り取ってしまう治療です。がん病巣が一気に、時に検査では分からなかった周辺の微小転移も含めて体内から切り取ることが可能であるため、それ以上の転移がなければ完治が期待できるという点が最大の利点です。

 一方で体への負担が大きくなることも多く、ご高齢の方や他の基礎疾患がある方への適用や術式の選択は慎重に行います。当院では、体への負担(侵襲)の少ない内視鏡(胃カメラ、大腸カメラ、膀胱鏡など)を使った手術や、腹腔鏡、胸腔鏡を使った手術も積極的に行っています。

2.放射線療法

 リアニックと呼ばれる放射線治療装置を用いて、体の外からX線や電子線を当てる治療です。これら放射線を使いがん細胞の増殖を抑えたり、死滅させたりします。根治目的の他、病変による痛みや通過障害などがんによる症状を和らげる目的でも使います。治療の回数は目的やがんの種類などによって異なりますが、複数回受けられる際は多くの場合、平日に毎日繰り返しての治療となります。

 当院では2台のリニアックが稼働しています。治療の際はリニアックや治療室に用意されたX線装置を用いて位置を調整し、正しい位置へ治療できるようにしています。転移のない肺がんや肝臓がん、個数の少ない脳転移などへは、より高い精度が必要となるピンポイントの治療(定位放射線治療といいます)も行っています。また、定期的に第三者機関による認定を受けることで、正しく放射線が出せているかの確認をしています。手術や化学療法といった他の治療と組み合わせることもありますので、各診療科と連携しながら治療を行います。

3.化学(薬物)療法

 がんが原発臓器から他の臓器や組織に広く転移している場合やがん細胞が全身に広がっているような状況において、がん細胞を攻撃したり増殖を妨げたりする薬(抗がん剤、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害剤など)を用いて行う治療です。薬剤の投与方法は点滴や注射、内服と行った方法が一般的です。

 手術治療を行った患者さんやこれから手術を行う予定の患者さんでも、検査では検出できない微小な転移が体内に存在する可能性の高い場合には、手術療法と組み合わせてその前後で行うこともあります。また、互いの治療の効果の増強を期待して放射線治療と同時併用することもあります。

4.遺伝子療法(がんゲノム診療)

 原発不明がん(転移のみが出現していて最初の原発がんが見つからないようながん患者さん)、希少がん(比較的、ときに非常に稀な種類のがんの患者さん)、標準治療の効果がなくなってそれ以上期待できる治療が見当たらなくなったがんの患者さんでは、今後の治療法に患者も医療者も悩みます。

 このようながん患者さんの診断や治療に役立つ最新情報を探す新しい検査を通じて、一人ひとりのがんの個性(原因)を明らかにし、患者さんにより適した治療薬の情報を提供する次世代のがん治療です。

 人体の設計図ともいわれるDNAの配列を最先端の分析機器を使って、遺伝子を幅広く調べ、その結果を症状と照らし合わせることで、患者さんの少ない難病やこれまでに知られていない新しい疾患の診断を行います。

 しかし、これは極めて高度な専門知識や高額な機器を要し、当院単独では実施できません。そこで当院では、長崎大学病院 がんゲノム診療センターと連携して診療を進めることにしています。

長崎大学病院 ゲノム診療センター ホームページ

5.希少がん診療

 がん(悪性腫瘍)の種類は大変たくさんあって、それらの発生頻度の高いものから低いものまで様々です。『人口10万人あたり6例未満の「まれ」ながん、数が少ないがゆえに診療・受診上の課題が他に比べて大きいがん種』の総称を「希少(きしょう)がん」と呼んでいますが、現在200種類近くの悪性腫瘍が希少がんに分類されています。当院では、長崎大学病院がん診療センターと連携しながら診断治療を行う方針となっています。当院受診された患者さんが希少がんあるいはその疑いがある場合は同センターに相談したり紹介受診していただくことがあります。

 希少がんの概要およびその診断、治療などについては国立がん研究センターのホームページに解説が掲載されていますので、下のリンクからご覧ください。

国立がん研究センター 希少がんセンター

6.小児がん診療

 小児がんとは、一般的に15歳未満の小児に発生するがんの総称です。成人では生活習慣に起因することの多い大腸がん・胃がん・肺がんなどの頻度が高いのとは異なり、小児がんは白血病が約4割を占め、次いで脳腫瘍(のうしゅよう)、リンパ腫が多いのが特徴です。小児がんの治療は成人のがんと同じく、手術・薬物療法(化学療法)・放射線治療・造血幹細胞移植などが必要に応じて行われます。一方で、小児がんは成長期に厳しい治療を行わなければならないため、患者や家族に大きな負担が生じることになります。そこで当院では、小児がんの診療にあったては長崎大学病院の小児科やがん診療センターと積極的に連携しながら診療を行っていく方針としています。

国立成育医療研究センター 小児がんセンター

7.AYA世代のがん診療

 AYA世代とは、Adolescent & Young Adult(思春期・若年成人)のことをいい、15歳から39歳の患者さんがあてはまります。小児に好発するがんと成人に好発するがんがともに発症する可能性がある年代で、AYA世代に多い特徴的ながんも存在します。この年代は、中学生から社会人、子育て世代とライフステージが大きく変化する年代でもあります。当院では、一人ひとりのニーズに合わせた支援を行っていますが、時にその問題は多岐にわたり専門家の支援が必要となるときもあります。そのようなときは、長崎大学病院のがん診療センターやそれぞれのがんの専門診療科と連携しながら診断治療を行っております。

 AYA世代のがんについては国立がん研究センターが紹介していますので、下のリンクからご覧ください。

国立がん研究センター AYA世代のがんについて

8.妊孕性温存療法

 令和3年度より長崎県では、小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業が開始され、長崎大学病院が指定医療機関に認定されています。当院では、「小児・AYA世代の女性がん患者等の生殖に関する相談体制について」の運用フローに沿って、長崎大学病院へご紹介します。

長崎大学病院がん診療センター